~~~討伐条件~~~
現在はアルマデル第八支部の保管庫にて保管、管理されている。研究、調査を行う際は特権階級以上の職員を1名以上管理室入口に配置し、出入りする人数を確認すること。また、調査は一時間以内で終わらせること。もし研究前後で研究員の人数に変動があった場合、直ちにナズナ管理官へ報告すること。
M-30αⅩ幹部補佐により、最新機器へのデータ移行が試されたが、最新機器及びその他、当オブジェクト以外での機器では記録されている内容の閲覧は不可能であった。そのため、調査の際は当オブジェクトのみで行い、また機器自体への調査は必ずM-30αⅩ幹部補佐立ち会いのもとで行うこと。
このカミサマは、次々に人が失踪するという噂のあった廃墟の奥底に眠っていた古めかしいブラウン管のパソコンである。機種は■■■-■■のものとみられているが、詳細は不明である。
失踪の第一の犠牲者は、とある一人の小説家であると見られている。彼に家族はなく、また気難しい性格であったため友人もごく少なかった。失踪したという事実事態の発覚は、彼が失踪したと推測される日の一カ月後であったため、失踪前後の状況やその経緯については謎が多いとされている。
操作方法、及び基本的な調査の手順は以下のとおりである。
1,起動後「eligarf」とパスワードを入力し、デスクトップへ移行する。
2,無数のファイルには膨大な量のテキストデータが存在する。その中の「無題第23章」というファイルをダブルクリックする。
3,ブラウン管の液晶部分にあるガラス部分が融解し、創作世界へ通じる様になる。
⚠︎世界へ入る際は現実と繋がるロープを装着すること。
4,必ず一時間以内に、ロープを辿り帰還する。
⚠︎創作世界へ持ち込んだ物資は必ず持ち帰り、また創作世界の物資はこちらへ持ち出さないこと。
5,帰還後は当オブジェクトへの接触を三日間禁止とする。
当オブジェクトは、創作世界へ入り込んだ人間の求める景色を描き、また望む人物との邂逅を叶わせる。だが、その創作世界は完全ではない。目につかないような道端の草、すれ違った通行人の顔、果ては大事な空の色。その大小や重要度は場合に寄るが、必ず世界のどこかが不安定で、脆く、瓦解しかかっている。通行人の世間話に整合性はない。互いの視線は噛み合わない。それでもその世界は、鮮やかな幻想を、君に魅せることだろう。
だが、決して忘れてはならない。その世界がいくら夢のように美しく蠱惑的であろうと、その世界は『創り物である』ということを。
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とある創作家が夢を見た。自分が書いている創作物のヒロインと出会う夢。文章上にしか居なかった彼女が、等身大の姿で聞いた事もない綺麗な声で、目の前に現れる夢。それは、今思えば恋だったのかもしれない。 創作家はそれから今まで以上に筆を走らせた。文字の上で踊る彼女が愛おしくてもっと見ていたくて彼の筆は彼女と共に踊り続けた。しかし、ある夜の事、彼は気付いてしまった。…否、思い出してしまった。 この物語は彼女が死ぬ事で終幕を迎えるという事を。気付いた頃にはもう軌道修正なんて出来そうにない程に物語は進んでいた。
だから、彼はこの物語を壊してしまった。
有り得ないような舞台展開、今まで無かったようなこじ付けで後付けの設定、無理矢理な場面展開。それらを繰り返し、ようやく彼女の死を回避して平和な暮らしを与えた頃には、世界は既に、脆弱に瓦解し尽くしていた。
このカミサマは、そんなとある創作家が終わらせてしまった世界たちが眠る古めかしいブラウン菅方のパソコンである。 またの名を『創作墓場のフラジール』、と。
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~~~調査報酬~~~
Version.1:関係者の追憶を1減少させる
Version.2:関係者の追憶を1減少させる
Version.3:関係者の侵蝕を1上昇させる
Version.4:関係者の侵蝕を1上昇させる
Version.5:関係者の追憶を上昇させる